研究概要 |
癌のリンパ球移入療法は,T4によるサイトカイン産生や,タ-ゲティングの基礎研究を志向しているが,本質的問題が別の所にある.移入細胞の腫瘍局所での血管外遊出,腫瘍細胞との最初の非特異的接着,腫瘍細胞のMHCによる自己抗原の提示が挙げられる.移入療法に合わせて,炎症性サイトカインの局所高濃度を図り,接着分子を誘導すれば,強力な手段となろう. 1ー2.【Lyの非特異的活性化と増殖培養】固相化CD3刺激法では,まず,T4細胞が増殖し2次的にNKが増殖活性化する.非特異的活性はNKの頻度と強く相関しT3とは負の相関であった.重回帰分析ではT8その他の要因の寄与は小さかった.本法により,NKの著名な増殖と,古典的LAKの20ー30倍の活性が得られた例では臨床的にも秦効した.今後は,NK細胞の増殖と活性強化を目指したい.臨床使用可能なIL2亜至適量に,臨床的濃度のIFNーα併用して顕著な活性の回復が得られた.TCRγδ細胞は増殖してこなかった.LFAー1は,腫瘍細胞のICAMー1と関連して検討したい. 3.【Lyの特異的活性化】炎症性サイトカインによる腫瘍細胞のclassI抗原の増強,腫瘍を含めた広範囲な細胞でのclassIIの誘導が報告されている.これによる自己抗原の提示は,T細胞による腫瘍の直接的認識と破壊の段階で重要な概念となろう.次年度課題を勘案した株化細胞の検討では,classIは9/15株で発現,うち,胃癌由来では5/6,大腸癌0/2に発現,ClassII発現は1/15株であった.炎症性サイトカインの意義を見るモデル作成を進めている.大腸癌の原発巣からの初代培養が全例で成功するようになった.応用上,2代目への植継ぎが現在の課題である.【臨床応用】移入療法を施行した13例中5例が評価対象となり,うち,2例でBRM的効果,局所炎症を惹起し得た大腸癌肝転移で著効.慢然と移入した2例は無効であった.また,腹腔内移入時に末梢Lyからの著名な動員が見られ,局所環境への操作が重視された.肝転移中心の計画に変えて施行中である.
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