研究概要 |
[リンパ球培養法の開発]T細胞の増殖法はほぼ確立し,増殖の悪い担癌患者でも開始時の粘着細胞の大部分除去により増殖性は著名に改善した。一方,固相化CD3刺激培養細胞の強力な活性は,二次的に増殖するNK-LAKによることが判明した。活性は古典的LAKより一桁高く顕著に増殖するが出現は不定であり頻度も最高数十%程度であった。この細胞の意図的な増殖法を開発している。 (1)培養開始時の血清が重要で,諸報告と異なり,ヒト血清でNKが,FCSでTが増殖した。 (2)ICAM-1を発現し,class Iを発現していないK562に刺激効果があった。 (3)固相化FN,リンパ球培養上清は無効であった。 (4)IL-1/6共刺激によるNKのIL-2R誘導を検討中である。 (5)培養1週の自己Mφに,強力なNK刺激作用があり,長期培養Lyで全どT4となり,増殖せず,活性の全く無いものからもNKが選択的に増殖して過半となり,強い活性が回復した。 (6)これに用いるMφの作成を検討した。末梢血粘着細胞の培養開始時の血清濃度と以後のpHが重要であり,よい条件で低刺激下で維持すれば1週以内なら,IFT-γの添加で任意の時期にMφへの分化が可能となった。Mφ刺激Ly法を開発中である。 [癌細胞の培養]ICAM-1/class I発現頻度別の株化細胞パネルを作成し保持している。新培養株は継代ごとに凍結保存している。上記(6)の細胞を用いた,接着分子の研究に供する。 [臨床応用]本年度は移入療法を14回実施し,移入療法の有用性が確認されたが,IL-2が高価なものとなり,従来のままでは臨床応用が困難となっている。培養法の効率化,質的改善,局所適用などの努力が一段と要求されている。また,熊谷らの,ICAM-1/LFA-1,CD44発現による転移臓器の相違の報告からも臨床応用では接着分子が軽視できない。江川らの自家腫瘍免疫におけるallo抗原の意義,内田らの,NK活性,TIL,自家腫瘍による被刺激性と相関せずに予後と相関するATK活性など,移入療法上配慮すべき問題点は複雑化している。
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