研究概要 |
癌の細胞移入療法を行ってきた.固相化CD3刺激法で末梢血リンパ球を培養すると強力な細胞障害活性が得られ,時に古典的LAK細胞の20-30倍の活性に達した.この活性はCD16^+の頻度とのみ強く相関し,NK細胞が担うと考えられた.10日以上大量培養した31培養のうち,NKが700-6000倍に増殖した例が7培養あったが,このような増殖は他の方法では得難く,NK細胞の活性化とfeederとしてのT細胞の存在が注目された.そこで,意図的にこの状況を成立させる目的で,選択的増殖の条件を検討した.使用血清に選択的増殖効果があった.粘着細胞存在下でFCSを用いた場合に主にT細胞,特にCD4^+が増殖したのに対し,AB型血清を用いると主にNK細胞が増殖した.粘着細胞を除去しておくと,2-3週の培養でCD16^+細胞が90%前後を占めた.固相化CD3/FN,IL-1/6,OK432,IFN-γ,活性化Mφ,K562細胞などの組み合わせでは,NKの顕著な増殖効果は得られなかった.これを手がかりに,まずNKの活性化機序を検討した.NKのうちCD16^<dim>56^+のものが増殖性よく,CD16^<bright>のものが細胞障害活性が高いといわれる.一方,CD16抗原(IgG-FcR)はNK活性化の主要経路である.血清中のγグロブリン(γ-G)に注目すると,可溶性のものはFcRをblockし,架橋が可能でもcapping等を起こす条件では抑制的に働き,一定時間架橋状態が持続する場合に活性化(CD25発現)が起こるなどの複合した効果が想定される.まず培養時使用濃度のAB血清は,CD16抗原の90%をblockした.次に,固相化γ-G刺激6日では濃度依存性にCD16^<dim>56^+が得られ,18日ではCD16^<bright>56^+が得られた.さらに,0.5μg/mlの低能度で固相化したγ-G刺激でも3日でCD56^+細胞選択的にCD25が発現した.また,固相化濃度を上げるとCD16^-56^+25^-の新集団が出現した.この応用はNKの選択的活性化に有力である.なお,大量増殖のためには,増殖性の維持とfeederとの組み合わせを引き続き検討しなくてはならない.
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