研究概要 |
本計画は,担癌患者末梢血リンパ球を固相化CD3刺激によって大量に増殖し,臨床応用するところから出発した.大量培養法を確立し,13症例について,39回の培養を行い,うち37培養を用いて細胞移入療法を施行した.培養法および培養経過を報告書に示した.また,症例一覧,治療内容と臨床経過および副反応の推移を報告書に示した.10^<10>前後またはそれ以上の移入ができた担癌8症例について,少なくとも一時的に効果があったと考えられる5例のほか,併用他療法が奏功した1例があった.症例は雑多であったが,PRの得られた症例6(MTD)は治療計画のモデルになると考えられた.すなわち,局所療法,高活性NK,ついでCTLの移入というダイナミックな考え方である. 当初はT細胞の増殖を期待したが,固相化CD3で刺激したにもかかわらずNK細胞が増殖することがしばしばあり,強い活性があった.ヒト血清中に含まれるIgGを介した,NKの活性化によると考えられた. 固相化IgG刺激によるNKの選択的活性化法の開発に着手した.微量の固相化IgGによりNKは選択的に粘着性を獲得したため,これをNKの精製に応用した.この刺激でNKは活性化し,一部が増殖一部はapoptosisに陥った.刺激培養条件の詳細な検討が必要であった.活性化NKはCD16を喪失し,1dcにはCD25を強く発現した.これと細胞死を指標として刺激培養初期の条件を検討した.IL2が必須であること,培養初期にT細胞の共存が必要であること,Moの残存は活性化と細胞死の両面の効果があること,刺激後期にNKを分離回収してIL12を添加することによってMoの活性化効果のみを代替えできることなどが判明し,これらの条件を満たす刺激培養法を開発した.これにより高純度NKの1000倍の増殖が得られた.固相化IgG刺激法の主要部分は平成9年度科研費によったため,ここでは概略のみを示した.
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