研究概要 |
Lethal spotting strainマウスの繁殖・経代をすすめ当研究施設でのコロニ-形成に成功した。当マウスミュ-タント系は、本来の無神経節腸管に由来する消化管運動の欠如及び免疫系機能の不全による病死に加えて環境の微妙な変化やストレスに極めて弱く数度に渡って繁殖マウスの途絶をきたしたが、米国・ジャクソン研究所は忍耐強くミュ-タント種マウスの提供を惜しまなかった。現時点にてヘテロ、ホモgenotypeを合わせて、約250匹を常時実験系に用いている。 初年度に当たる本年度においては、具体的には次の様な新知見が今回の実験系から得られた。即ち、 (1)lethal spotting系ホモ型マウスは従来よりヒトHirschsprung病と同様の無神経節腸管を有しているとされる事実が今回の実験系にても確認されたが、特に肛門側の腸管での病理組織学的所見では低形成像が著しく、hypogenesis of enteric gangliaと称されるヒトのヒルシュスプルング病類縁疾患と酷似している。 (2)同ミュ-タントマウスの腸管神経叢の形成異常は従来考えられていたよりも広範な神経発生異常に基づく機序によっている可能性が明らかになった。中枢神経系の発生異常との発生機序の相関等が本症の原因を究明する糸口をあたえている。 (3)同ミュ-タントマウスの胎仔における考察はヒトのヒルシュスプルング病の発生機序に多くの示唆をあたえつつある。特に臨床検体との比較が進行しており、次年度の神経堤細胞遊走阻害の機序解明に向けての有力な基礎デ-タとして確立せしめつつある。 尚、当年度での知見は(1)Research in Surgery(2)Eur J Pediatr Surg,in presd(3)J Pediatr Surg,in pressにて公表過程にある。
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