研究概要 |
我々は乳化剤のリン脂質を陰イオン性界面活性剤であるphosphatidylgycerolに変えることにより,生体応用可能な画期的な粒子径の小さい,安定性のよい新脂肪乳剤の開発に成功したうえで,リン脂質と中性脂肪をトリチウムで別々にラベルして、新組成脂肪乳剤の体内動態をオートラジオグラフィーで測定した。その結果,我々が開発したphosphatidylglycerol乳剤は肝,肺によく取り込まれ,血中に蓄積しないこと,また,リン脂質を変えると脂肪粒子の臓器指向性が大きく変化することも見出した。さらに、初乳化の基礎実験より、リン脂質としてphoshatidylglucose(P-GLU)を用いると、平均粒子径が160nmとさらに微細な脂肪乳剤粒子を作成できることが判明した。 このP-GLU乳剤の静注後の代謝の特徴を、我々の考案した新しいHPLCシステムを用いて脂肪乳剤に含まれるリン脂質の動態という新しい観点から検討した。 脂肪乳剤の乳化剤として用いるリン脂質により、エマルション化された乳剤粒子のdelivery systemは大きく異なるのみならず、余剰のリン脂質はそれ自体でミセル粒子を形成し、静注されれば極めて緩徐に代謝されることが報告されている。我々の今回の検討では、血中からのP-GLU消失速度は従来の卵黄レシチンや先に見出したphosphatidylglycerolよりもさらに迅速であり、体内蓄積の少ない乳化剤であることが判明した。 脂肪乳剤の代謝を考える場合、中性脂肪のみならず、リン脂質の代謝も考慮することが肝要であることを今回の検討で明らかにでき、体内代謝の迅速なP-GLUを乳化剤とした脂肪乳剤の有用性が示された。
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