1.初めに1)単一球面振動子による1重集束より複数球面振動子による2重集束の方が好ましい2)超音波振動数はコンピュータシミュレーション結果から500KHzより700KHzの方が好ましい3)同様にシミュレーション結果から隣接する振動子の印加電圧の位相の調節により超音波の収束性が変化するという知見を得た。 2.上記知見から、700KHz、8枚の球面振動子からなる装置を試作した。 3.試作装置を用いて1)ハイドロフォンによる水中音場分布、各位相によるビームプロフィルを得た。結果は先のコンピュータシミュレーションのそれと良好な一致を認めた。2)次に放射圧による超音波強度の可視化を試みた。媒体液面に放射圧による水柱が生じ、8本の超音波束が良好な収束をなすのが観察された。 4.更に軟部組織等価寒天ファントム、並びにプレスハムを用いてそれぞれ1)温度上昇のタイムコース2)温度分布(サーモグラム)に関する結果を得た。結果は工学的焦点位置で最も高温の加温域を生じ、焦点より4cm離れたところではほとんど温度の上昇は認められなかった。先記した位相の変換により加温の半値域の値が変わる(2.5〜3.5cm)ことが認められた。 5.血流のある家兎太腿部、及び担癌太腿部での温度上昇のタイムコースでは、目標超音波収束部で良好な加温域が得られることを示した。 6.家兎太腿部に対する組織学的影響については、50゚C、5分間の処置で、軟部組織の炎症的変化、毛細血管からの血液の漏出が一部に認められた。しかし、比較的に太い動静脈では明確な変化は観察されなかった。今後、諸種の加温条件、焼灼治療の為の最適条件を決定することが今後の課題となるであろう。
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