研究概要 |
現在までratでのin vivo実験はほぼ終了している。その結果を腹膜炎導入前→12時間後→24時間後で示すと、血中エンドトキシンは0.21→8.5→21.2pg/mlと漸増、肝energy chargeは0.86→0.81→0.73と低下、肝脂肪量は23.7→25.2→28.4μg/g肝,肝組織重量あたりのphosphatidylcholine hydroperoxide(PCOOH)は740→1001→2628pmol/g肝,肝脂肪量あたりのPCOOHは24.5→49.8→75.2pmol/μg脂肪と増加が認められた。この間肝組織血流量に変化はみられず、エンドトキシンによる肝エネルギ-代謝障害に活性酸素による膜脂質過酸化の亢進が重要と考えられた。また、radical scavengerであるSOD、カタラ-ゼの混合投与により、ラットの生存率の改善,肝energy chargeの低下の抑制,PCOOH濃度の軽減が認められた。このことからも、敗血症時の肝障害発症に活性酸素が大きく関与していることが明らかにされた。 in vitroでの培養肝細胞5×10^4個にエンドトキシンを添加した場合、培養上清中にLDHの若干の増加を認めた幹、肝細胞でのPCOOHの増加および^3Hーロイシン蛋白合成能に非添加時と差はみられなかった。一方、肝細胞5×10^4個とKuptter細胞4×10^5個を混合培養した場合、エンドトキシンの添加量を増加させるに従がい培養上清中のLPHの増加および肝細胞PCOOHの増加、蛋白合成能の低下を認めて。以上のことより、エンドトキシン自体には肝細胞膜直接障害はわずかであり、エンドトキシンにより賦活されたKuptter細胞が産生する活性酸素により肝細胞膜の脂質過酸化反応が亢進し、肝細胞が障害される可能性が示唆された。今後内皮細胞、浸潤好中球を用いての混合培養系により、活性酸素障害に関与するそれら細胞の役割を検討する予定である。
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