研究概要 |
癌は同じ臓器由来、進行度、組織型で且つ同じ治療を行ってもそれぞれの患者の予後は一様ではない。これは個々の腫瘍により増殖能が異なるためであり、そうした腫瘍増殖能に関してMitotic Index,Labeling Index,DNA量 Ploidy patternそして最近ではKーras,Nーmyc,erbーBー2など各種の指標が検討されているが末だ統一的なものはない。転移再発をきたし易い症例を事前に予知することが出来ればそれらに対するより積極的な集学的治療が現行の癌治療成績を向上させる大きな要因になる可能性が高い。本研究においてもまずヒト新鮮腫瘍細胞の選択的培養系である二層軟寒天培養法により新鮮癌細胞のInvitro 増殖能をDNA合成能やコロニ-形成能を指標に検討した。手術後の生存期間が判明している胃癌112症例について予後との関連を検討するとDNA合成能やコロニ-形成能によって判定した腫瘍細胞のInvitro増殖能は術後一年以内死亡群と一年以上生存群を明瞭に区分けする結果を得た。 すなわち、10^5個細胞当りの ^3H Thymidineの摂取率が900cpm以上の症例は一年以内死亡例31例中22例(69%)であり、一年以上生存47例中,5例(34%)である(p<0.01)。また、5×10^5個細胞当りの形成されたコロニ-数30個が同様に予後予測因子として機能することが見いだされている。また、我々はBromodeoxyuridine(以下BrdU)を術前患者に投与して手術的に摘出した腫瘍をフロ-サイトメトリ-によって解析することにより腫瘍の生体内における増殖能Tpotを算出できることを明らかにしている。TpotはInvitro腫瘍倍加時間に匹敵するわけであるが、胃癌原発巣(8症例)のTpotは9.0±8.3日、転移巣(5症例)は6.1±0.7日と転移巣のInvitro増殖能の方が明らかに高い。更に、検討症例を畜積してこれらInvitro,Invio増殖能パラメ-タ-の臨床的意義を明確にしてゆきたい。
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