研究概要 |
転移再発をきたし易い症例を予知することができれば現行の癌治療成績を格段に向上させることが可能である。 患者予後に密接に関連する指標としてMitotic index,Labeling index,DNA量,DNA ploidyそして最近ではK-ras,N-myc,erb B-2などの癌遺伝子やRB,P53などの癌抑制遺伝子の増幅や発現・欠失など各種のものが検討されてきている。 そうした背景のもとに本研究では当初から腫瘍細胞のIn vitro増殖能の指標としてコロニー形成能、^3Hサイミディン摂取能CPM、DNA ploidy そしてIn vivo増殖能の指標としてTpotなど複数のパラメーターを導入して個々の腫瘍の増殖能を測定してきた。 これは、腫瘍の生物学的な特性を考慮した時に、1指標では患者予後までを予測することに無理があるのではと思われたからである。 しかし、研究を遂行してゆくと上記の複数のパラメーターは基本的にはお互いに関連しあっていることが確認された。 すなわち、一般に原発巣よりも増殖能の高い転移病巣はコロニー形成能やCPMが高く、腫瘍倍加時間に相関するTpotが短く、Aneuploidyが多いなどと一連のものである。 加えて、本研究の当初に胃癌の局所浸潤度に関連した病理因子と密接に関連することを見い出されたCPM値はそれのみで胃癌や大腸癌患者の術後生存期間を予知する因子として極めて有用であることが判明してきた。 すなわち、173症例の胃癌患者および127症例の大腸癌患者の術後累積生存率をそれぞれCPM値別に比較する一方、単変量・多変量解析を施行することにより、CPM値の高・低が胃癌患者においては肝転移の有無と共に最も重要な独立した予後予測因子として機能することが見いだされ、また、大腸癌患者した患者では壁深達度や組識分化度などよりは遥かに重要な予後予測因子であることが判明した。 すなわちち、CPM値高・低は術後補助療法の強化が必要な患者群の選別に極めて有用な指標となることが示された。
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