大腸癌における癌遺伝子、癌抑制遺伝子の発現を利用した診断並びに治療法の開発

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03454317
• 研究機関: 浜松医科大学
• 研究代表者: 馬場 正三 浜松医科大学, 医学部, 教授 (40107818)
• 研究分担者: 中井 勝彦 浜松医科大学, 医学部, 助手 (50217642) ; 喜納 勇 浜松医科大学, 医学部, 教授 (60010211) ; 藤田 道也 浜松医科大学, 医学部, 教授 (60014031)
• キーワード: 大腸癌発癌機構 / APC遺伝子 / ras遺伝子 / p53遺伝子 / villous adenoma

研究概要

(目的)adenoma-carcinoma sequenceによる大腸癌の発癌機構を解明するために、adenomaの中でも高率に癌化するといわれているvillous adenomaを使い、APC遺伝子、ras遺伝子、p53遺伝子の変異を検討する。
(材料)villous adenoma6例の正常大腸粘膜または血液、adenomaの中心部や周辺部などの数カ所と、癌を伴う場合には、癌の中心部や周辺部などの数カ所のそれぞれより標本を採取し、DNAを抽出した。
(方法)まず、APC遺伝子領域のLOH(loss of heterozygosity)を検索した。APC遺伝子内のRsa IによるRFLP(restriction fragments length polymorphism)を用いて、PCRによりその領域を増幅し、Rsa Iで処理し、agaro-segelにて電気泳動した。次に、大腸腫瘍で変異の約60%が集中するMCR(mutation cluster ression)部分の検索を始めた。
(結果)症例2は癌は伴わないcreeping typeのvillous adenomaの症例であるが、adenomaにLOHとcodon1309からAAAGAの5baseのdeletion変異を認めた。 その他の症例は他の制限酵素を使ったLOHの検索を行っている。
(考察)creeping typeの腫瘍内の数カ所でAPC遺伝子の変異は同じであり、この腫瘍ではmonoclonalに増殖していると考えられる。さらに症例を増やし、同一腫瘍内でのmulticlonalな増殖の有無について検索し、また山田IV型の形態のadenomaとcreeping typeの増殖をするadenomaとでAPC遺伝子の変異の種類の違いがあるか、さらに、tubular adenomaとvillous adenomaとで変異に差があるかについても検討したい。また、p53、ras遺伝子についても現在検索中である。

研究成果

• [文献書誌] Y.Miyoshi,H.Ando H.Nagase 他10名: "Germ-line mutations of the APC gene in 53 familial adematous polyposis patients." Proc.Natl.Acad.Sci. 89. 4452-4456 (1992)
• [文献書誌] 馬場 正三,安藤 浩,西庄 勇: "大腸癌と癌遺伝子" 大腸癌:基礎と臨床 消化器セミナー. 46. 13-22 (1992)
• [文献書誌] 常吉 俊宏,照沼 秀也,藤田 道也,馬場 正三: "Allele Specific PCR" 生体の科学. 43. 145-153 (1992)
• [文献書誌] 馬場 正三,木俣 博之,安藤 浩,中村 利夫: "家族性大腸ポリポーシスと癌" 臨床科学. 28(10). 1270-1276 (1992)
• [文献書誌] H.Nagase,Y.Miyoshi,A.Horii 他6名: "Correlation between the Location of Germ-Line Mutations in the APC Gene and the Number of Colorectal Polyps in Familial Adenomatous Polyposis patients." Cancer Research. 52. 4055-4057 (1992)
• [文献書誌] A.Horii,S.Nakamura,Y.Miyoshi 他7名: "Frequent Somatic Mutations of the APC Gene in Human Pancreatic Cancer." Cancer Research. 52. 6696-6698 (1992)