体内冷却肝潅流及び自己肝移植法による悪性肝疾患の治療

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03454318
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 山岡 義生 京都大学, 医学部, 講師 (90089102)
• 研究分担者: 森本 泰介 京都大学, 医学部, 助手 (60135910) ; 森 敬一郎 京都大学, 医学部, 助手 (80159186) ; 田中 紘一 京都大学, 医学部, 講師 (20115877) ; 嶌原 康行 京都大学, 医学部, 助手 (30196498)
• キーワード: 肝切除術 / 体内肝冷却潅流法 / 自己肝移植

研究概要

肝移植実験においては、ドナ-となる犬は摘出後死亡させることになり体温の管理は不用であった。一方、体内肝潅流法の実験ではユ-ロコリンズ液では1時間、UW液では2時間のtotal vascular exclusion(TVE)に耐え得る結果を得たが、この際、体温の調節が極めて困難で、肝温度22℃を維持すると体温は32℃にまで低下する場合があり死亡に直結することがある。
今回の研究において、全肝を体内潅流し摘出すると体温は30℃にまで低下し、Biopumpを使用しても、肝も体外に摘出保存している間に犬は死亡することが多く、実験動物の多くを失った。
一方、臨床においては、Biopumpを使用しTVEを施行しても体温の低下は問題にならず、31例に経験した生体肝移植の肝グラフト摘出時は体内で冷却、ラクテ-トリンゲル液およびUW液で潅流した後にバックテ-ブルに移動させているが全例、体温の低下による合併症、UW液の影響はない。更に、肝グラフトそのもののViailityは良好で、摘出時血中ケトン体比(AKBR)は1.0以上の高値を示し移植後の機能も良好でグラフト自身の機能不全による死亡例はなかった。
この手技を利用した肝癌に対する肝左葉切除、バックテ-ブルでの腫瘍摘出、残存肝の同所性移植においても体温調節、肝機能維持などの問題は発生せず手術は成功、1年の生存を得ている。
以上のような現状から、体内冷却潅流を動物でモデル化する事は極めて困難である。生体肝移植の経験から次年度においては動物実験を中止し、臨床例の蓄積に心がけたい。

研究成果

• [文献書誌] Y.Yamaoka,et al: "Liver resection for hepatocellular carcinoma(HCC)with direct removal of tumor thrombi in the main portal vein." World J.Surg.,.
• [文献書誌] A.Tanaka,et al.: "Expanded liver resection for hepatocellular carcinoma with multiple intrahepatic metastasis. A case report." Eur.J.Surg.,.
• [文献書誌] Y.Yamaoka,et al: "Total vascular exclusion for hepatic resection in cirrhotic application of venoーvenous bypass." Arch.Surg.,.
• [文献書誌] Y.Yamaoka,et al.: "New devices for harvesting the hepatic graft from the living donor." Transplantation,. 52. 157-160 (1991)
• [文献書誌] N.Yamamoto,et al: "Seventyーtwoーhour preservation of porcine liver by continuos hypothermic perfusion with UW Solusion in comparison with simple cold storage." J.Surg.Res.,. 51. 288-292 (1991)
• [文献書誌] N.Ozaki,et al: "Arterial blood ketone body ratio as an indicator for viability of donor livers." Transplant.Proc.,. 23. 2487-2489 (1991)
• [文献書誌] Y.Yamaoka,et al.: "Extensive surgery for hepatocellular carcinoma to improve resectability and curability." Japan Scientific Societies Press, Taylor & Francis LTD.,12 (1991)