研究概要 |
癌細胞の基底膜浸潤能の定量的測定方法としてのinvasion-MTT assayは、撥水処理を導入することにより信頼し得る測定方法として確立された。同法によって求められた基底膜浸潤能(PI値)とともに、基底膜に対する接着能,分解能(Type IV collagenase活性)および細胞の増殖能,遊走能について、ヒト消化器癌を対象に解析した。肝転移25例では非転移26例に比べPI値が有意に高値を示し、癌細胞のPI値と肝転移との関連が明らかであった。また、PI値は接着能,分解能,増殖能および遊走能との有意の相関を認めず、これらの因子の総合的な結果であることが示唆された。しかし、肝転移例におけるType IV collagenase活性は非転移例に比べ有意に高値を示し、肝転移のメカニズムの重要な一因であることが示唆された。さらに、in-vivoのヌードマウス脾内移植モデル8腫瘍の肝転移発現率とPI値の間に有意の相関を認めた。以上より、PI値による肝転移予知とともに、Type IV collagenase活性の制御による肝転移予防の可能性が示唆された。 臨床研究として、教室の切除消化器癌906例(胃癌447例,大腸癌417例,膵癌42例)を対象とした臨床病理学的検索と、対象症例から得られたヌードマウス移植腫瘍30株(胃癌7例,大腸癌14例,膵癌9例)に対してinvasion-MTT assayを行い、肝転移の予知について比較検討を行った。臨床病理学的因子では静脈侵襲、リンパ管侵襲、リンパ節転移が肝転移に有意な関連因子であったが、肝再発に対するSpecificityはそれぞれ90%以上と高値を示したのに対し、Sensitivityは20%以下と低値を示した。それに対し、肝再発例におけるPI値上昇(cut off値:0.8%)のSpecificityは90%、Sensitivityは70%とともに高値を示した。以上より、invasion-MTT assayによって得られたPI値は、肝転移予知に関して従来の臨床病理学的因子より有用であることが示唆された。
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