研究概要 |
平成4年度までにビーグル犬を用い、肝分離灌流を用いた温熱化学療法を行ないその安全性を確認し、新システムを確立した。平成4年度より臨床において転移性肝癌患者7人に対しこのシステムを用いた温熱化学療法を行なった。7例中6例は大腸癌の肝転移であり1例は胃平滑筋肉腫の肝転移であった。7例中5例は最長24ケ月,最短4ケ月の期間であるが肝転移再発を認めていない。1例は7ケ月後に残肝再発を認めたが,再切除を行ない術後13ケ月の現在再々発を認めていない。1例は灌流中に肝温度が上昇し術後14日目に肝不全で死亡した。 諸家の報告によると,大腸癌の肝転移例では肝切除を行なっても50〜60%の残肝再発を認め,残肝再発予防が予後を左右する重要な因子といえる。現在種々の方法が試みられ,ある程度の効果が報告されているがいまだ満足できるものではない。この新しいシステムを用いた肝分離灌流温熱化学療法による転移性肝癌の治療は現在術後の観察期間が短く、既存の治療方法と比し抗腫瘍効果および予後の改善をもたらすかを検討している。
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