研究概要 |
1.イヌによる実験的検討 (1)脊髄の虚血条件の強弱とFPCの態度,およびFPCと対麻痺発生との関係:1)実験結果:1左内胸動脈と左鎖骨下動脈遠位の胸部大動脈を遮断する脊髄虚血モデルでFPCは全例3分以内に消失した。2上記のモデルで動脈遮断継続時間と対麻痺発生の頻度を検討すると,FPC消失後20分遮断継続では対麻痺発生は見られなかったが,30分遮断では33%,40分遮断では83%,50分遮断では100%の対麻痺発生が見られた。3筋弛緩剤使用時にも非使用時と同様の結果がえられた。2)結論:胸部大動脈遮断時のFPCモニタリング法は,対麻痺を起こす脊髄虚血を,皮膚電極だけの無侵襲的方法で3分以内に知ることが可能であり,FPC消失後15分以内に脊髄虚血を解除すれば,対麻痺発生を防止しうることが示唆された。 (2)FPCとSEPの比較:ニュ-ロパック8を購入し,FPCとSEPの同時刺激,同時記録が可能になった。上記と同様の脊髄虚血モデルでFPCの波形変化はSEPより早期に出現し,より鋭敏な脊髄虚血モニタ-となりうることが示唆された。 2.臨床的検討 胸部および胸腹部大動脈瘤8例にFPCモニタリングを施行した。FPCの消失が4例に認められたが,そのうち,消失後2分および13分で血流を再開しえた2例には,対麻痺は見られず,血流再開がFPC消失後23分となった1例は痙性対麻痺(3カ月後歩行可能)に,また,大動脈遮断前に肋間動脈が切断され,その後FPCの出現を確認できなかった1例は弛緩性対麻痺となった。結論:FPCモニタリング法は何らかの補助手段を用いて大動脈遮断部末梢の血流を保てば,術中の鋭敏な脊髄虚血モニタ-として使用できる。
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