研究概要 |
サイクロフォスファミドを用いた免疫学的寛容誘導法を発展させるとともに人工心肺を用いた家畜ブタでの同所性心移植を行った. 実験1.[方法]B6(H-2^b),C3H(H-2^k),BALB(H-2^b)マウス8-10週齢雌を用いた.day-1に抗Thy1.2mAb 100μgををrecipientに腹腔内投与した.day-0にdonor由来の脾細胞9×10^7個および骨髄細胞3×10^7個を静脈内投与し,さらにday-2にサイクロフォスファミド200mh/kgを腹腔内投与した.皮膚移植はday-15に行った.[結果]C3H→B6,B6→C3H,BALB→B6,BALB→C3Hの組合わせでのdonor皮膚移植片生着の中央値(日)は各々123(n=19),136(n=9),>503(n=15),>165(n=8)であった.C3H→B6,B6→C3Hの寛容マウスにおいて第3者BALBの皮膚は正常に拒絶された. 実験2.[方法]家畜ブタ雌20-25kgを用いた同所性心移植実験を行い,細胞外液組成(Na87,K20)の九大式心筋保護液(I群)と細胞内液組成(Na10,K117)のコリンズ液(II群)による移植保存効果を比較検討した.保存液の温度は0℃,保存時間は4時間とした.Donor心は保存終了時に九大式心筋保護液にて保存液をwash outした.移植手術中は20分毎に心筋保護液5ml/kgを注入し,局所冷却を併用した.大動脈遮断解除1時間後にEmaxを計測した.[結果]両群とも計5回の同所性心移植手術を施行した.人工心肺よりの離脱はI群I例(20%),II群の3例(60%)で、この内Emaxの測定まで可能であったのはII群の1例のみであった.不成功の主な原因としては,I群はLOS 5例(80%),出血1例(20%)であった.現在までのところ長期生存は得られていない. [考察]実験1では,完全同種のさまざまなマウスの組合わせでも抗体,細胞,サイクロフォスファミドの投与で免疫寛容が成立することが確認された.実験2では九大式心筋保護液による心保存の有用性が示唆されたが,長期生存ブタを得るまでにはいたらず,今後の実験系のさらなる改良が望まれる.
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