研究課題
悪性グリオ-マ照射後摘出組識標本より、照射線量と照射終了時から再手術までの期間との相関において、組識学的照射効果とS期細胞数の変化をBUdR染色にて検討した。glioblastoma初回手術例(照射前)のBUdR LIの平均は8.2%で、照射後手術群の平均LIは3.8%であった。LIが1%未満を示した5例の照射線量は平均65.6Gyであり、1%以上を示した8例の平均57.5Gyと有意の差を示した。照射線量増加につれてLIは低下する傾向を認め、最小の照射線量でLI01%未満を示したのは、外部照射70Gyであった。照射後の病理組識所見を、腫瘍細胞の変化、腫瘍内の血管の方化、各部位でのBUdR LIの状態より検索し、組識学的照射効果とBUdR陽性細胞出現を整理すると以下3型に分類された。(1)内皮細胞増殖を示す血管が閉塞しその周囲が全壊死となる。(2)同血管が部分的に開存し、周囲に細胞質腫大や多核化などの変化を受けた細胞が生残し、一部BUdRの取り込みを認める(LI1〜2%前後)。(3)開存した毛細血管周囲に同じく形態変化を受けた細胞が生残し、その間の小型ないし中型の腫瘍細胞がBUdR LI2〜5%以上を示す。照射後BUdR LIが平均8.2%から3.8%と低下したことは、照射による影響と考えられた。しかも放射線照射終了時点のBUdR LIが低い例ほど、再発までの時間、および生命予後が良いことが示された。照射後組識のBUdR染色の解析より、生残細胞は内皮細胞増殖のない軽度拡張した毛細血管周囲に観察され、BUdRの取り込みはほとんどみられなかった。従って、照射効果が強く現れた症例では、内皮細胞増殖を示す血管のほとんどが閉塞した結果、周囲の増殖細胞群がそのまま凝固壊死に陥ったものと考えられた。
すべて その他
すべて 文献書誌 (4件)