研究課題
ヒト継代グリオーマ細胞U251MGの増殖がPDGF依存性であること、PDGF anta-gonistであるトラピジールが、このU251MG細胞の増殖を抑制すること、この機序としてトラピジールはU251MG細胞のG_0-G_1期からS期への移行を抑制し、分化を誘導することを明らかにした。今年度は、PDGF依存性グリオーマにおける細胞内情報伝達系、核内遺伝子の変化に対するPDGFantagonistの作用について検討し、トラピジールによりU251MG細胞のprotein kinase C(PKC)活性の細胞質分画から細胞膜分画への移行が抑制されること、およびU251MG細胞の核内癌遺伝子であるfosの発現が抑制されることを明らかにした。一方、トラピジールと同様にPDGF antagonistであるスラミンは、低濃度(100ug/ml)では各種グリオーマ細胞の増殖を促進し、高濃度(200ug/ml,500ug/ml)で増殖を抑制したが、低濃度のスラミンはグリオーマ細胞の細胞周期においてS期、G_2-M期への移行を促進し、また細胞内のPKC活性の増加をきたすことを明らかにした。また、悪性グリオーマ髄腔内播種症例に対して、ANCU髄腔内灌流を行って副作用、髄腔内薬物動態および治療効果を検討した。その結果、10mgのACNUによる髄腔内灌流で副作用なく有効な髄液中ACNU濃度を達成できることを明らかにし、治療効果判定可能であった11例中6例に有効症例がみられ、悪性グリオーマ髄腔内播種に対してACNU髄腔内灌流療法が有効な治療法になり得ることを明らかにした。
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