研究概要 |
ネコの運動領硬膜外腔に刺激電極を慢性植込みし,背部皮下に植込んだレシーバーと結線し,慢性的に12ヶ月の間、無線にて刺激を行なった。刺激は1日2時間,四肢のmotor responseが認められる強さで5〜50Hzのfrequencyにて行なった。刺激中にケイレン発作は全く認められず,途中で記録した脳波でも,ケイレンに関係する異常波は認められなかった。また,組織学的にmotor corfexならびに周辺組織を検索したが,gliosisなどの異常所見は認められず,慢性硬膜外運動領刺激の安全性が確認された。 そこで臨床例(中枢性疼痛)に対して,慢性硬膜外運動領刺激を行なった。対象は,視床痛の患者10例で,nastonとinionの中点から頬骨弓の中点に向かう線上に小穿孔を設け,運動領硬膜外腔に刺激電極を挿入し、刺激によって疼痛部にmotor responseが出現する部位を選択して刺激を行なった。この結果,上肢の痛みに対しては,正中から2〜6cmの間,下肢の痛みに対しては,正中から2cmの位置,さらに顔面の痛みに対しては,正中から6〜8cmの位置が最適であった。 充分に満足できる除痛効果が得られたのは10例中6例で、術前の薬理学的テストによって,イソゾール(バルビツレート)テスト;有効,モルフィンテスト;無効の症例が充分な除痛効果を認めた。しかし,バルビツレートテスト;無効の症例では効果が軽度で、術前の疼痛の性質ならびに薬理学的検討を行ない,治療の対象となる症例を選択することも必要と考えられた。また,手術手技として,電極の周囲への出血による肉芽形成は,刺激域値の上昇を認めたため,現在は小開頭を行ない,電極の硬膜への総合さらにtenting sutureを行なうことによって,電極周囲での肉芽形成も認められず,良い結果が得られている。
|