研究概要 |
ヒト骨肉腫細胞株OST、ラット骨肉腫細胞株ROS17/2.8及びマウス骨肉腫細胞株POSー1に対するビタミンD_3の抗腫瘍効果、及び骨芽細胞の表現形質をマ-カ-とした分化誘導効果を検討した。ビタミンD_3の抗腫瘍効果はMTT assay、colony forming assay及びヌ-ドマウス法にて検討し、分化誘導効果は腫瘍細胞内ALP活性、培養液中bone glaprotein(BGP)の測定及びヌ-ドマウスの摘出腫瘍の組織学的検討にて行った。用いた骨肉腫は3株とも1α,25(OH)_2D_3の濃度依存性にMTT assay、colony forming assayにいずれにおいても増殖抑制効果がみられ、ALP活性、BGP量の造加作用が認められた。ヌ-ドマウス法では、1α,25(OH)_2D_3のmasked compoundである1α(OH)D_3を2.5nmol/kg隔日腹腔内投与することにより、投与開始後9日目から有意な増殖抑制効果を認めた。副作用は認めなかった。摘出腫瘍の組織学的検討では、ROS17/2.8とPOSー1においては、治療群において壊死範囲の増加を認めたのみであったが、OSTにおいてはコントロ-ル群では全く認めなかった広範な軟骨形成を治療群の7匹中5匹に認めた。さらにヒト骨肉腫細胞株と臨床材料に対するビタミンD_3の抗腫瘍効果ならびに分化誘導効果を骨肉腫内ビタミンD_3リセプタ-との関係で検討するにあたり、ビタミンD_3リセプタ-の定量を行った。実験系が正確に行われているかを示すために既にレセプタ-の存在が確かめられている臨床材料(乳癌組織)及び培養細胞株(ROS17/2.8)においてラベルしたビタミンD_3を加えてRadioreceptor assayを行い、それぞれ8.74fmol/mg、12.5fmol/mgのレセプタ-の存在を認めた。今後はヒト骨肉腫細胞株及び骨肉腫の臨床材料のビタミンD_3リセプタ-の定量を行い、1α,25(OH)_2D_3の投与による抗腫瘍効果ならびに分化誘導効果との関係を検討していく予定である。
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