これまでにヒト骨肉腫細胞株 OST、ラット骨肉腫細胞株ROS17/2.8及びマウス骨肉腫細胞株POS-1に対するビタミンD_3の抗腫瘍効果、及び骨芽細胞の表現形質をマーカーとした分化誘導効果を検討し、1a、25(OH)_2D_3が濃度依存性に増殖抑制効果を認め、ALP活性、BGP量の増加作用も認められることを示してきた。またヌードマウスへ1a、25(OH)_2D_3のmasked compoundである1a(OH)D_3を2.5nmol/kg隔日腹腔内投与にて増殖抑制効果を認め、OSTにおいては治療群で広範な軟骨形成を認めた。今回さらにヒト骨肉腫細胞株と臨床材料に対するビタミンD_3の抗腫瘍効果ならびに分化誘導効果のメカニズムを検討するにあたり、骨肉腫内ビタミンD_3リセプターの定量を行った。ヒト骨肉腫培養細胞株であるMG63、OST、MNNG-HOS、KHOS-npのリセプター量はそれぞれ31.08、12.12、6.36、2.99fmo1/mgであった。さらにそれぞれの細胞株の増殖抑制効果をみるためにColony forming assayを行うと、リセプターの豊富なMG63においてリセプターの豊富なROS17/2.8と同様に増殖抑制効果を認めたが、リセプターの少ないMNNG-HOS、KHOS-npでもある程度の増殖抑制効果を認めた。さらにヌードマウス法においてリセプターの豊富なMG63とリセプターの少ないMNNG-HOSとを背部皮下に移植して1a(OH)D_3の腹腔内投与による影響を調べようとしたがMG63が可植されず、逆にMNNG-HOSにおいて増殖抑制効果を認めてしまった。現在はMatrigelにて可植率が上昇するという報告に従いMG63+Matrigelにて移植を試みている。またALP活性も有意な結果がでず、FBSの濃度を変えたり、Ascorbic acidを加えたりして行っている。今後は本当にリセプターの差異で増殖抑制効果が変わるのか、他のメカニズムが存在するのかを探求していく予定である。
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