研究概要 |
1.ラットを麻酔し,その大腿骨を徒手的に骨折させ,実験的骨折を作成した.その後,ケ-ジにて飼育し4日後に手術的に骨折部の血腫を摘竹した. 2.細胞成分を組織培養器にて培養し,継代培養2代目で再びラットの頭頂骨の骨膜下ならびに腹部の筋肉に移植した.移植した後に飼育し,1週間後,2週間後、3週間後に手術的に頭頂骨を骨膜とともに摘出した.また,同時に腹部筋肉を摘出し,それらを組織学的に検索して新生骨の形成状態を観察した.その結果,骨膜下には新生骨の形成されている状態を見いだした.しかし,腹部筋肉内には新生骨は形成されていなかった.このことから,血腫の細胞成分は骨の近辺という骨形成に有利な環境では,血腫そのものが独自に骨形成する能力,すなわち,骨形成能を有するが,筋肉内という骨形成に対しあまり良好でない環境では骨形成能を発現さすことはできないということが判明した.しかし,血腫の細胞成分には骨形成能があるという結論に達した. 3.現在骨の形成能を有することが確認されているサイトカインを,培養血腫の細胞成分に添加し,細胞増殖の程度を観察した.いずれのサイトカインを添加しても,細胞の増殖は促進されるが,その際,血腫の血清成分を添加すると,細胞増殖がさらに著しく促進された. 4.血腫を凍結乾燥した後,粉末状にし細胞成分を除去して血清成分だけにした後,ペレット内に包埋し,実験的に作成した骨欠損部に移植した. その後,組織的に観察すると,ペレットの周囲に新生骨が形成されていた.さらに,ハイドロオキシアパタイトとともに移植すると,さらに良好な骨形成が観察された.このことから,血清成分には骨を誘導する能力のあることが判明した.
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