研究概要 |
二酸化炭素は脳血流を調節する主要な代謝性因子であると考えられている。ハロセンとバルビツレ-トは、脳代謝率を減少させることから脳血流量を減少させることが期待される。ところが実際には、バルビツレ-トは脳血流を減少させるが、ハロセンは増加させる。そこで今回、摘出脳動脈の低炭酸ガス収縮に対するハロセンとペントバルビタ-ルの作用を調べた。 (1)イヌの脳動脈の螺旋状標本を作成し、5%CO_2,95%O_2の混合ガスで通気したリンゲル液中に1.5gの静止張力下に懸垂し、その等尺性変化を記録した。 (2)低炭酸ガスは、リンゲル液を2.5%CO_2,97.5%O_2の混合ガスで通気することによって導いた。それぞれの標本で、3回低炭酸ガス収縮を導き2回目の収縮をハロセンあるいはペントバルビタ-ルの有無で比較した。 (3)低炭酸ガスによって脳動脈は持続性の収縮を生じた。この収縮は、ハロセン0.4,0.7及び1.5%で有意に抑制されたが、ペントバルビタ-ルでは、高濃度(3×10^<-4>M)でのみ有意に抑制された。 (4)KCl15mM収縮は、ペントバルビタ-ル10^<-4>Mで有意に抑制されたが、ハロセン0.7%では影響がなかった。 ペントバルビタ-ルの血中濃度は、10^<-5>Mから10^<-4>Mと推測されることから、臨床使用濃度で比べると,脳動脈の低炭酸ガス収縮は、ペントバルビタ-ルよりもハロセンによって影響をうけやすいことが示された。代謝性調節による脳動脈収縮は,バルビツレ-ト麻酔中には保たれるがハロセン麻酔中には抑制されることが示唆される。
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