研究概要 |
1.脳血流には脳の神経活動に似合った脳血流を維持する代謝性調節機構が働いている。その主な調節因子は炭酸ガスであり、脳組織の代謝産物としての炭酸ガスの産生量の増減により血管拡張或いは収縮を生じ、血流が調節される。麻酔薬は一般に脳代謝を抑制するが必ずしも脳代謝と脳血流の間に一定の相関はない。静脈麻酔薬のバルビツレートは脳代謝を抑制し、脳血流を減少させる。一方、揮発性麻酔薬のハロセンは代謝を抑制するが、血流は逆に増加する。これは、脳代謝抑制の結果生じる低炭酸による脳血管収縮に対する麻酔薬の直接作用に差があるからと考えられるが、これを直接証明した血管は得られていない。本研究は、低炭酸惹起脳血管収縮に対する揮発性麻酔薬の作用について検討する事である。 2.イヌ摘出脳動脈の輪状標本を95%02,5%C02で飽和した37℃リンゲル液中で懸垂し、等尺性張力変化を記録した。KC120mMで中等度収縮させた後、通気炭酸ガス濃度を2.5%にして低炭酸惹起収縮を観察した。この収縮は血管の内皮除去によって影響を受けなかった。 3.揮発性麻酔薬のハロセンは0.5、1.0、2.0MACによって濃度依存性に低炭酸惹起収縮を抑制した。イソフルレンは0.5、1.0MACでは影響しなかったが、2.0MACで有意に抑制した。セボフルレンは何れの濃度でもこれを有意の抑制を示さなかった。 4.以上の結果から、低炭酸惹起脳血管収縮には血管内皮細胞からのEDRF/NOの抑制は関与しない。低炭酸惹起脳血管収縮をハロセン>エンフルレン>セボフルレンの順で抑制することが示された。
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