研究概要 |
本年度は昨年度からの研究をさらに発展させ,ヒト前立腺癌の増殖特性に関わる遺伝子群として.がん抑制遺伝子群にまとをしぼり,ヒト前立腺癌患者より得られた組織から抽出したm-RNAをもちいて,これら遺伝子の構造異常の有無の検討を分子生物学的方法で行った。 その結果,興味ある所見が得られている。 ヒト前立腺癌組織よりのm-RNAはC-DNAに逆転写し,これをがん抑制遺伝子RB(rezinoblaszoma)とP53の各300〜400塩基づつの設定で人工合成したプライマーセットを用いPCR反応を行い,その産物をT.7ポリメラーゼにてRNAに再合成し,PAGゲルにて.高次構造の差による泳動パターンの差異によりRB・P53遺伝子の構造異常の同定を行った。その結果,22例のヒト前立腺癌,7例の前立腺肥大症組織中,RBが5例の前立腺癌で,P53が4例の前立腺癌で異常が見つかった.これらは.塩基配列を調べてみると,点突然変と1〜数塩基の欠失が認められた。 RB遺伝子の異常はほとんどが低分化型腺癌に見られ,また再燃症例4例中3例がこのRB遺伝子の異常が認められ,RB遺伝子はヒト前立腺癌のプログレションの過程に深く関わることが示唆された。 このように,今回の検討によりがん抑制遺伝子がヒト前立腺癌の発生進展、増殖機構に関わることが明らかとなり、今後,がん遺伝子,増殖因子,アンドロゲン依存性をめぐる相互関係への関わりの解明に重要な所見が得られたと考えられる。 これらの結果,第52回日本癌学会総会や第81回日本泌尿器科学会へ発表予定である.
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