研究概要 |
本研究ではヒト前立腺癌の増殖機構を遺伝子発現や遺伝子の構造異常の観点より検討し、様々な状態の患者より得られた前立腺癌組織や細胞で分析した。そして、ヒト前立腺癌の増殖特性を遺伝子レベルで理解することを目的とした。 本研究により、ヒト前立腺癌には、増殖機構に関わる様々な遺伝子の様々な異常が存在することが明らかとなった。当初予測した3群の遺伝子群の中で特にがん遺伝子(c-myc,bcl-2)と調節的な働きを持つ遺伝子群のうちがん抑制遺伝子(P53,R13)の異常の存在が明確に示された。アンドロゲンと増殖因子が関わる増殖系では異常の存在はアンドロゲンレセプター遺伝子の異常の存在の有無が示唆されたが、アンドロゲンで誘導される増殖因子ははっきりしなかった。また、DNAの修復に係わるDNA-ポリメラーゼβ遺伝子の異常の有無をヒト前立腺癌ではじめて明らかにした。 これらの検討の結果はヒト前立腺癌は増殖に関わる様々な遺伝子の異常の疾患であることを示唆したものであり、この結果を基に更なる遺伝子異常の検索と前立腺癌の遺伝子診断や治療法の開発に糸口を与えたものと考えられる。
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