初期胚着床の詳細な検討を細胞培養系を用いて行った。初期胚はヒト、家兎を用い、着床の場としてそれぞれの子宮内膜を培養し静置しその後の胚発育を経時的に検討した。 1.生体外で月経直後の内膜再生を再現できた。 2.不胚症患者から得た内膜を体外で患者本人の血清存在下で培養できた。 3.家兎子宮内膜培養系で着床現象を正確に再現できた。 4.初期胚着床にはカルシウムとラミニンが必要であった。 5.着床の場を規定する脱落膜空間を考えると着床現象の理解の手助けになるものと考えられた。 6.初期胚の絨毛細胞には特異的なコラゲナーゼ活性が存在し、この活性の変化によって子宮内膜内での絨毛細胞の振舞いが制御される可能性が示唆された。 7.初期胚の着床のプロセス、その後の胚発育も培養系で正確に再現された。 以上のことから、培養システムは着床機序のさらなる解明につながるものと思われる。また、本システムを利用した研究は不妊症治療時にカルシウムや細胞外成分(とくにラミニン)の臨床応用を示唆するものと思われた。 平行培養(不妊症患者から得た内膜培養システム)は治療周期の治療の正否を予測できるものとして今後不妊症治療に利用できるシステムと思われた。 今後、着床部位の検討、ICMの着床との関連、ヒト着床過程の経時的観察などが本システムで再現、研究可能であると考えられた。
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