研究概要 |
手術摘出された性成熟期婦人の子宮より内膜組織を無菌下に採取し、細切後の組織片を酵素処理して比重遠心法によって上皮細胞、間質細胞に分離した。間質細胞をプロゲステロン添加下で約2週間培養すると、形態学的に脱落膜様の分化が誘導された。これにともなって培養上清中へのプロラクチン分泌も起こり、経時的に増加してゆく。このin vivoでの子宮内膜分化すなわち脱落膜化に対応した実験系を用いて免疫応答の中心的役割を果している2種類のサイトカイン、インタ-ロイキン1(ILー1)とマクロファ-ジコロニ-形成因子(MーCSF)に関する検討を行い、以下の結果を得た。 1.ILー1は添加濃度依存的に脱落膜化を抑制し、この作用は単なる細胞障害によるものではないことが証明された。また、ILー1により脱落膜化が抑制されている細胞でも、そのプロゲステロンセプタ-にはmRNAレベルの量的変化は認められなかった。 2.培養内膜間質細胞はMーCSFを分泌しており、その分泌はプロゲステロンによって刺激、維持されているという非常に興味深い事実が明らかとなった。一方、腺上皮細胞もMーCSFを分泌しているが、その分泌には性ステロイドは影響しなかった。MーCSFの分泌動態については現在、遺伝子レベルでも検討中である。 他方、子宮内膜間質細胞、腺上皮細胞を抗原としてマウスを免疫し、各構成細胞に特異的なモノクロ-ナル抗体を数種類作成しているが、これらの抗体については月経周期各期、妊娠等での変化を免疫組織化学により検討中で、現在その一つ2n8では対応抗原の解析もほぼ終了している。なおさらに、異所性の子宮内膜や子宮内膜癌組織等での検討も行いつつある。また、間質細胞にはaminopeptidase N抗原(CD13),neutral endopeptidase抗原(CD10)が表出され,他方腺上皮細胞にはdipeptidyl peptidasae IV 抗原(CD26)の存在が証明され、これらの抗原も内膜の分化に伴って変化してゆくことが明らかとなった。
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