研究課題/領域番号 |
03454398
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中野 仁雄 九州大学, 医学部, 教授 (40038766)
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研究分担者 |
佐藤 昌司 九州大学, 医学部, 助手 (00225947)
前田 博敬 九州大学, 医学部, 助手 (20199631)
小柳 孝司 九州大学, 医学部, 助教授 (30136452)
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キーワード | ヒト胎児 / 散瞳 / 縮瞳 / 眼球運動期 / 非眼球運動期 / 超音波電子スキャン / 睡眠 / 覚醒 / 胎児行動 / 最小二乗メディアン回帰分析 / 妊娠末期 |
研究概要 |
成人においては、瞳孔は睡眠中には縮小、覚醒時には散大した状態にあり、睡眠・覚醒を記述する場合に客観的な指標となることが報告されている。しかしながら、ヒト胎児における瞳孔径の変化については明らかにされていない。そこで、本年度はヒト胎児の瞳孔径の変化と眼球運動の観察を同時に行い、散瞳と縮瞳の2つの状態が存在することを数理的に証明するとともに、散瞳/縮瞳の両状態と眼球運動期/非眼球運動期との関連について検討を加えた。対象は娠妊35ー38週の正常胎児30例である。この30例を観察した結果、全観察時間の90%以上の期間、瞳孔が明瞭に認められた12例を以後の解析の対象とした。超音波電子スキャンを用いて、1秒間に1回づつ瞳孔径を計測し、測定値の経時変化図に対して最小二乗メディアン回帰分析を行った。一方、眼球運動については、一分間を単位として、個々の一分間に観察される運動の頻度を求めて、眼球運動の経時的な変化を記述した。さらに、この一分間毎の刻みのなかに1回以上の運動が認められる状態を眼球運動有りとみなして、眼球運動の有りと無しの並びが持続する期間を各々眼球運動期と非眼球運動期とした。その結果、瞳孔径の測定値は散瞳(全計測値の9.7%、平均瞳孔径3.0mm)と縮瞳(90.3%、1.7mm)の2つの状態に、統計学的有意差をもって区分されることが明らかとなった。さらに、散瞳状態は眼球運動期の14.3%、非眼球運動期の2.3%の期間観察され、眼球運動期に占める割合が有意に長いことが分かった。以上の成績から、妊娠末期ヒト胎児には、瞳孔径で識別される2つの異なった状態:散瞳と縮瞳が実在しており、前者は眼球運動期と密接な関連があることが明らかとなった。
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