研究概要 |
本年度は.主として聴神経腫瘍の症例に対して次の研究を行った。 すなわち, 1.聴神経腫瘍の起源神経について、各々の手術例につき検討を加えた。 2.聴神経腫瘍の前庭器官の病態は.腫瘍の大きさと病変の程度に関連性があるか。 3.術中の上、下前庭神経、蝸牛神経の電気刺激による誘発波形のモニタリングによって得られた所見と術前に得られている温度眼振検査、聴力検査、聴性脳幹反応との比較を検討した。 その結果以下のようなことが分った。 1)聴神経腫瘍の起源神経については、殆んど全例が、下前庭神経起源で、これらは.我々の以前のデ-タをより一層裏ずける結果になった。 2)聴神経腫瘍の症例における末梢前庭器の病変は、より中枢部に腫瘍が存在し、内耳道内で腫瘍が発育するため、循環障害と腫瘍による逆行性変性が推定されたが得られた半規管や耳石器の感覚細胞の変化は比較的軽度であり、その理由等については更に研究を進める必要がある。 3)術中の各神経の刺激による誘発電位については、ヒトに関しては世界で最初の試みであり、未だ画一的な所見が得られていないが、次年度にはこの研究は更に進行することが期待される。
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