研究概要 |
網膜色素変性症は失明原因の上位を占める社会的に重要な疾患である。本疾患は遺伝性であるが,本疾患の中には種々の遺伝形式が含まれるため単一の疾患ではなく数多くの疾患群の総称であろうことは以前より知られていた。しかしその原因については様々な研究がなされてきたにもかかわらず長い間不明であった。近年の分子生物学の進歩により,本疾患のうち常染色体優性遺伝を示す家系の一部にロドプシン遺伝子の異常が発見され,本疾患の病態の理解に突破口が開かれた。本研究は日本人の網膜色素変性症患者におけるロドプシン遺伝子の異常の有無,種類および頻度を検索し,さらにロドプシン以外の網膜特異的蛋白質をコ-ドする遺伝子の有無を検索することにより本疾患の病態解明について新しい知見を得ることを目的とした。初年度はまず本症患者の臨床診断および遺伝子DNAの精製さらに正しく遺伝子診断が行なえることを目標とした。その結果,本疾患者は本年度末までに140名を登録し,同時に遺伝子DNAの精製を行なった。内訳は孤発例57%,常染色体劣性25%,同優性15%,X染色体劣性3%であった。ロドプシン遺伝子の異常の有無の検出法としてはPCR法による各エクソンの増幅に引きつづき,SSCP法による電気泳動法を行なった。ロドプシン以外の網膜特異的蛋白質としてはまずはじめにMEKA蛋白質を選び,同様な方法(PCR+SSCP)を用いて行なう遺伝子診断法を確立した。初年度はこの診断法の確立に重点がおかれまた放射線同位元素を用いずに行なう方法を応用したため臨床の現場とタイアップした研究となることができた。初年度後半からはこれまで蓄積した患者遺伝子DNAを用いた遺伝子診断のスクリ-ニングが開始され,次年度へ継続されている。
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