研究概要 |
網膜色素変性症は遺伝性、進行性の視力障害、視野障害、夜盲をきたす疾患で我が国における成人中途失明原因の第3位に位置する社会的にも重要な眼疾患のひとつである。本疾患に対しては長らく原因不明であり、したがって有効な治療法もなかったが、近年分子生物学的手法の進歩により本疾患のうち常染色体優性網膜色素変性のうちの一部の家系にロドプシン遺伝子の突然変異が発見され、ロドプシンをはじめとする網膜特異的蛋白質の異常によって本疾患が発症しうることが明らかとなった。本研究では日本人における網膜色素変性疾の原因遺伝子の特徴を明らかにするため平成3年度より日本人の網膜色素変性症患者の血液からの遺伝子DNAの採取、ロドプシン遺伝子異常の検索を開始した。本年度は前年度に引き続き、患者遺伝子の採取を行ない、全国より約400例、うち優性遺伝性のもの54家系の遺伝子DNAを集めることができた。ロドプシン遺伝子異常の検索法としてPCR法による遺伝子断片の増幅を行なった後、一本鎖DNA高次構造多型解析(SSCP)法を用いて遺伝子異常を検出した。ロドプシン遺伝子についてはコドン347の異常のもつ一家系が確認されたほか、エクソン1,4,5のPCR増幅断片中に疾患とは特に関係のないポリモルフィズムが検出された。また第2の候補遺伝子としてペリフェリン1RDS遺伝子に注目し、常染色体優性色素変性患者をスクリーニングしたところ一家系においてエクソン2に突然変異を検出した。この家系におけるペリフェリン遺伝子異常はこれまでに報告のない新しいものであり、また日本で初めてのペリフェリン遺伝子異常をもつ網膜色素変性症であることが明らかとなった。今後ペリフェリン遺伝子異常によって網膜変性をおこすモデル動物であるrdsマウスを用いて、網膜色素変性症の発症のメカニズムを検索する意義が認められた。
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