研究概要 |
初年度、2年度の実績よりRGDSポリマーにおいて細胞毒性がなく、終濃度700μg/mlでは培養水晶体上皮細胞に対する接着作用阻害作用があることが認められた。そこで今年度はin vitroにおいて、その効果が濃度依存性を示すかを検討し、併せて薬理作用時間を検討することでin vivoにおける薬物濃度と投与方法の決定を行うための予備実験とした。 方法としてはRGDSポリマーは前年度に報告した方法に沿って合成されたものを使用し、水晶体上皮細胞としては当教室で樹立したウサギ水晶体上皮細胞(TOTL-86)を用いた。2X10^5個のTOTL-86細胞を培養皿で15%牛胎児血清を含むイーグルMEMをもちいて培養した。培養開始24時間後に、培養液で溶解したRGDSを添加し、終濃度800,400,200,100,50μg/mlに調整した。対照は培養液のみ添加した細胞を用いた。添加48時間後および144時間後に写真撮影を行い、浮遊している細胞数と接着している細胞数から浮遊細胞の割合を算出し浮遊率とした。 結果)RGDS添加48時間後の細胞浮遊率は、RGDS800μg/ml添加細胞で100%を示し、400μg/mlでは22.9%、200μg/mlでは6.7%、100μg/mlでは1.2%、50μg/mlでは0.3%、対照細胞では2.1%であった。RGDS添加144時間後では、いずれの添加濃度の細胞でも、浮遊率は1%以下であった。 以上の結果から水晶体上皮細胞の接着阻害作用には200μg/ml以上のRGDSの濃度が必要であり、また投与方法として週に2回程度の瀕回投与か、徐放剤による長期投与が有効であると考えられた。
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