本研究はフォ-クト・小柳・原田病の病因と発症機序について、免疫組織化学などの技術を駆使して病理学的に検討し、本症の予防および治療法の確立に寄与することを目的としたものである。 フォ-クト・小柳・原田病発症後数年して悪性腫瘍のために死亡した患者の眼球を剖検時に摘出し、病理組織学的および免疫組織学的に検討した。臨床的には夕焼け状眼底を示し、ぶどう膜の炎症は治っているかにみえたが、病理組織学的にはぶどう膜にリンパ球の浸潤を伴った炎症が残存していた。ぶどう膜のメラノサイトは著しくその数が減少していた。残っているメラノサイトにはHLAクラフII抗原の発現が免疫組織化学的手法によって実証された。このことは、フォ-クト・小柳・原田病ではぶどう膜メラノサイトが炎症の標的になっていることを示すものであり、本症における夕焼け状眼底の発生機序を解明する上で非常に重要な知見である。 また、フォ-クト・小柳・原田病患者の皮膚白斑を生検して、免疫組織化学的に検討し、ぶどう膜とほぼ類似の炎症反応がおこっていることを証明した。 フォ-クト・小柳・原田病患者では、急性期および再発期のいずれにおいても、多くの症例で脳波に異常が検出された。これは本症のぶどう膜炎症状と中枢神経症状との関連を考慮する上で重要な所見である。 実験的慢性ぶどう膜炎の研究では、実験動物としてラットを使用して、視細胞間結合蛋白(IRPB)を構成するペプタイドの一部(R4)をぶどう膜炎誘発物質として用い、確実にぶどう膜炎をおこすことができた。 今後、この実験ぶどう膜炎において、ぶどう膜メラノサイトにHLAーDR抗原の発現があるのか否か、またこのぶどう膜炎が慢性的に持続した場合に肉芽腫性炎症を形成するか否かを検討する予定である。
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