本研究はフォークト・小柳・原田病の病因と発症機序について、臨床および実験病理学的に明らかにし、本症の予防および治療法の確立に寄与することを目的としたものである。 1)平成3年度 フォークト・小柳・原田病患者の眼球を病理学的に検討した。夕焼け状眼底になっている状態でも脈絡膜にはリンパ球の浸潤があり、炎症は持続していることを明らかにした。残っている脈絡膜のメラノサイトにはHLAクラスII抗原が発現し、メラノサイトが炎症の標的になっていた。フォークト・小柳・原田病患者では脳波に異常があることを明らかにした。視細胞間結合蛋白(IRBP)を構成するペプタイドの一部(R4)をラット足蹠に注射して、実験的自己免疫ぶどう膜炎モデルを作成した。 2)平成4年度 フォークト・小柳・原田病患者皮膚白斑を免疫病理学的に検討した。皮膚ではメラノサイトが減少し、血管の周囲にリンパ球が浸潤していた。その多くはTリンパ球で、CD4陽性細胞とCD8陽性細胞の比は約3:1であった。皮膚の白斑でも活性化Tリンパ球が病変の形成に重要な役割を演じていた。実験的自己免疫ぶどう膜炎では、角膜内皮細胞の表面に細胞接着分子(Intercellular Adhesion Molecule-1:ICAM-1)が発現していた。 3)平成5年度 実験的に眼内炎症を繰り返し起こさせることによって脈絡膜新生血管が発生した。そこで、臨床的および実験病学的に眼内血管新生の機序について検討した。ベーチェット病患者の23例25眼の摘出眼球を病理学的に検討し、眼内血管新生が鋸状縁から起こり易いことを明らかにした。フォークト・小柳・原田病の臨床所見および病理学的特徴を総説にまとめた。
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