角膜透過実験用in vitro拡散セル(現有設備)とHPLC(平成3年度購入)を用いて、眼科領域で用いられているステロイド、βーブロッカ-、アルド-スリダクタ-ゼインヒビタ-の角膜透過性を実験的に評価した。薬物によっては、物理化学的要因に基づく溶解度の不足、不安定性、定量の難しさなど困難な状況もあったが、透過実験方法およびHPLC定量方法の改良により克服することができた。 種々の眼科薬物の角膜透過実験デ-タを角膜2層モデルで解析した。角膜上皮の拡散係数は、10^<ー9>cm^2/Sのオ-ダ-であり、角膜実質では、10^<ー7>cm^2/Sのオ-ダ-であることが判明した。さらにこれら拡散係数と分子量との間には、角膜上皮では分子量の約3乗に、実質では分子量の平方根にそれぞれ反比例することが明らかとなった。また涙液層での薬物消失挙動を記述できるsideーcapacityーparallel flow(SCPE)モデル、角膜透過モデル及び眼内組織での薬物の分布・消失を記述する眼内薬物動態モデルを開発した。さらにin vitro実験より得られた拡散係数と分配係数を用い、先の3つのモデルを組み合わせて解析することによって、薬物点眼後の眼内組織中薬物濃度の予測が可能となった。この予測値は、実験デ-タのみならず他の文献に示されているin vivo眼内薬物濃度と良好に一致した。またモデルパラメ-タ-を変化させることにより、涙液及び房水の流動状態の眼内組織に及ぼす影響を定量的に検討できることがわかった。 本研究成果の一部はすでに日本薬剤学会第7年会(1991年9月東京)にて、「眼内薬物タ-ゲティング:硝子体内挙動」および第11回会眼薬理学会(1991年9月甲府市)にて「眼圧降下剤チモロ-ルの眼内移行:in vivo/in vitro相関」として発表した。
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