点眼剤ばかりでなく種々の眼科薬物送達システムから放出した薬効成分の眼内移行と消失過程を記述するための一般化眼内薬物動態モデルを考察し、その解法ソフトウエアをほぼ完成した。本研究で開発した眼内薬物動態モデルは、すべてのモデルパラメータを、カーブフィティングによらず独立のIn Vitro実験から決定するため、モデルパラメータの物理的意味が明確で動物実験と臨床試験との差を科学的に理解できる点で、カーブフィティングに依存するいままでの薬物動態モデルと根本的に異なる。抗炎症剤および眼圧降下剤について、本研究で開発したIn Vivo/In Vitro相関法の有効性を家兎の実験から確認した。平成3年度は角膜房水内挙動、水晶体挙動を実験的に検討し、平成4年度は、眼内深部(硝子体およびその周辺部組織)の挙動を実験的および理論的に検討した。とくに硝子体内の薬物は後房と網膜・強膜から消失し、水晶体にほとんど浸透しないことが判明した。また硝子体内の薬物消失における網膜・強膜の重要性は薬物の分子量と脂溶性に依存することを明らかにした。 涙液層での薬物挙動、角膜透過、水晶体カプセル膜透過、房水での分布・消失、硝子体内挙動、網膜・強膜透過など独立のIn Vitro実験から、一般化眼内薬物動態モデルのモデルパラメータを決定し、本研究で開発した解法ソフトウエアを使いIn Vivoデータを予測したところ、計算値は実測値と良好に一致した。 本研究の成果を多くの研究者に知っていただくため、第12回日本眼薬理学会(平成4年10月千葉県船橋市で開催)でシンポジウム「眼科薬物送達システム」を組織し、本人自ら「眼科薬物の眼内動態」として発表した。また、イタリーで開催された第10回国際眼科研究会議(平成4年9月開催)でのシンポジウムで招待講演者として「眼科薬物の眼内動態モデル」について本研究成果を報告した。
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