研究概要 |
家兎角膜内篇細胞を組織培養し、カバ-グラス上に継代培養した内皮細胞を用いて、内皮細胞の創傷治癒に関する実験研究を行なった。カバ-ガラス上にサブカルチャ-された内皮細胞に対し、直径3mmのフィルタ-ペ-パ-を用いて細胞を機械的に除去し、培養を継続しながら、内皮細胞創の治癒過程を定量的に観察した。第一段階の実験として、ヒト及び霊長類における内皮細胞の創傷治癒実験モデルとする目的で、培養液に5ーFluorouracil(5ーFu)を加え、細胞分裂を抑制した状態での創傷治癒を観察した。培養細胞を定時的に固定し、ギムザ染色を行ない,創傷面積を画像処理装置を用いて計画した。その結果、創の癒合測度は,5ーFu処理群と対象群で有意の差を認めなかったが、創傷治癒部の細胞密度は,5ーFu処理群では、対照群に比べ有意に低くし、ヒトにおける内皮細胞の創傷治癒に極めて類似した傾向を示すことが明らかとなった。つぎに、内皮細胞の創傷治癒過程における細胞骨格の役割りを明らかにする目的で、微小管(microtubule)の重合阻善剤である,デメコルシンを培養液に加え、創傷治癒過程を検討した。培養液中にデメコルシンを0.01〜1.0mg/mlの濃度で加え、細胞骨格をαーtubulinに対するモノクロ-ナル抗白で染色し蛍光顕微鏡を用いて観察した。デメコルシン濃度が0.1Mg/ml以上になると、内皮細胞の微小管の構造に明らかな異常が観察されるとともに、内皮創傷治癒速度も有意に低下することが判明した。内皮細胞の創傷治癒過程において,微小管が重要な意義をもっていることが明らかとなった。
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