原因不明の難治性自己免疫疾患とされるヒト・シェ-グレン症候群の疾患モデルの確立を目的として唾液腺ミュ-タントマウスを用いた病因論的解析を行った。近交系NFS/Nマウスの唾液腺腺房細胞に分化異常をきたすミュ-タントに生後3日目の胸腺摘出を施すと4週令以後16週まで可及的に自己免疫性唾液腺炎を自然発症することが明かとなった。病理組織学的観察より顎下腺のみならず耳下腺においても導管周囲性のリンパ球浸潤を主体とする高度の自己免疫性唾液腺炎が発症することから本研究におけるマウス自己免疫性唾液腺炎はヒト・シェ-グレン症候群唾液腺炎類似の病変と考えられた。間接蛍光抗体法によるマウス血清中の自己抗体の検索では耳下腺・顎下腺とも導管上皮細胞に高頻度に検出された。ELISA法による抗体価の検定により病変の発症と抗体価の上昇との相関が認められた。また、凍結切片を用いた免疫組織化学的観察により浸潤細胞の多くはThyl.2陽性、CD4陽性のT細胞であり少数ながらB220陽性B細胞が認められ、組織破壊に携わるT細胞とともに自己抗体産生に関与するB細胞の存在が示唆された。更に、クラスーII分子を表現するIa抗原の発現は自己免疫性唾液腺炎の発症する以前から腺実質上皮細胞に認められ臓器特異的自己抗原の提示能を示すものと考えられた。また自己抗原認識に重要な役割を果たすとされるT細胞レセプタ-のモノクロナ-ル抗体を用いた現在までの解析によればVβ6陽性T細胞の臓器浸潤が確認されており、自己免疫性唾液腺炎発症との関連性が強く示唆された。以上の結果より、本ミュ-タントを用いた唾液腺炎の自然発症モデルはシェ-グレン症候群の疾患モデルとして有用であることが判明し現在さらなる病因解析を継続中である。
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