研究課題/領域番号 |
03454425
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研究種目 |
一般研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
機能系基礎歯科学
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山田 正 東北大学, 歯学部, 教授 (50005021)
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研究分担者 |
高橋 信博 東北大学, 歯学部, 助手 (60183852)
岩見 憙道 東北大学, 歯学部, 助手 (60005030)
阿部 一彦 東北大学, 歯学部, 助教授 (40151089)
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研究期間 (年度) |
1991 – 1992
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キーワード | 糖代謝 / ウ蝕 / 歯垢 / レンサ球菌 / アクチノミセス / 酸産生 / 嫌気条件 / pH変化 |
研究概要 |
口腔レンサ球菌を高度嫌気・糖制限条件下で連続培養すると、培養pHを中性から酸性に変化されるに伴い、ギ酸と酢酸の産生量は減少し、乳酸の産生が増加することがわかった。これは(1)菌体内pHの低下に伴い、至適pHの低い乳酸脱水素酵素(LDH)活性が上昇し、至適pHが高く、ギ酸・酢酸の産生に関与するピルビン酸ギ酸リアーゼ(PFL)の活性が低下すること、(2)酸性pHで培養することによりLDHの量が増加することなどによるものであると考えられた。また、他のレンサ球菌に比べ、S.mutansは酸性環境下でもより多くの酸を産生するが、これは、菌体内のpHが5.1〜5.5という酸性下でもS.mutansではATPaseが駆動され、菌体外への水素イオンの排出が起こるためであることが判明した。この性質はS.mutansに強いウ蝕誘発能をもたらしていると考えられる。 乳酸桿菌においてもレンサ球菌と同様、嫌気ソルビトール代謝時には酸化還元バランスをとることが重要であり、一時的に酸素に触れてPFLが失活すると、代謝が滞る。しかし、酢酸が存在すると乳酸桿菌の場合にはレンサ球菌と異なり、PFLが失活していても、酢酸からエタノールへの代謝系が働き、NADHの再酸化系が機能するために酸化還元バランスがとれ、ソルビトールが代謝されることが判明した。 また、嫌気条件下においてアクチノミセスのグルコース代謝は、重炭酸の添加で3〜4倍に増加することがわかった。これは重炭酸が存在すると乳酸産生系に加え、コハク酸産生系が働き、リンゴ酸脱水素酵素およびフマル酸還元酵素がNADHのNADへの再酸化を効率よく行うためであると考えられる。ところで、このような重炭酸塩による糖代謝の促進効果は口腔レンサ球菌では認められなかった。 以上のように種々の因子が歯垢細胞の糖代謝に影響を与え、その影響も細胞により様々であることがわかった。
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