(目的)成長板軟骨は最終分化すると細胞外基質の石灰化を誘導する。このプロセスには多くの未知の因子が関与していると考えられるが、その存在や役割については明らかでない。そこで、本研究では、この問題を追究するために、軟骨細胞培養系の石灰化モデルを用いた。このモデルでの石灰化を、フーリエ変換赤外吸収スペクトルをとることにより分析すると、in vivoの軟骨の石灰化物と一致したが、骨の石灰化物とは相違していた。また高分解能の電顕での分析で、アパタイト結晶のサイズがin vivoの軟骨/骨と一致したが、in vivoのエナメルよりも小さいことを明らかにした(Dev.Biol.1993)。多くの成長因子とホルモンの受容体レベルが石灰化期に著しく変動することに発見した。さらに、軟骨の石灰化にはアスコルビン酸つまりII型コラーゲン産生が不可欠であった。しかしX型コラーゲンは石灰化とは直接関係していないことを明確に示した。一方、コンドロイチン硫酸プロテオグリカンは石灰化には必要でなかった。またヘパリンは最終分化を抑制することにより、石灰化を強く抑制することを見いだした。さらに、石灰化期に達した高密度ウサギ軟骨細胞培養系から抗原を調製し、マウスに免疫してモノクローナル抗体を作成した。モノクローナル抗体7L62は成長板とのみ反応した。この抗体は、300k蛋白を特異的に認識した。300k蛋白はコンドロイチナーゼABCに耐性であり、MONO-Qカラムに強く吸着して0.8Mで溶出した。また軟骨細胞培養系の培地に7L62抗体を添加すると基質への ^<45>Caの取り込みを30%抑制した。一方、60kコラーゲンのアミノ酸組成とN-末端のアミノ酸配列34残基を決定して、これがウサギX型コラーゲンであることを明らかにした。この配列は、ニワトリあるいはウシと異なる領域を有していた。 (結論)軟骨の主要な細胞外基質であるコンドロイチン硫酸プロテオグリカンは石灰化とは直接連結していないことを明らかにした。またII型コラーゲン合成が石灰化に不可欠である一方で、X型が石灰化には必要でないことを証明した。さらに石灰化と関係する新しい細胞外基質蛋白を同定した。
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