研究概要 |
本研究では,唾液腺によるギャップ結合の機能を解明するために,哺乳類のラットより分離した腺房を用いて,自律神経作働薬による唾液分泌やギャップ結合状態を,色素移動法で調べ,以下のことを解明した。 哺乳動物ラットの唾液腺からコラゲナ-ゼ処理で腺房を分離することに成功し,顕微鏡下で蛍光色素の細胞間移動が追及できるようになった。顕微鏡下に,分離腺房へ蛍光色素を注入し,隣接細胞への蛍光色素の移動を調べると,大部分での腺房で1分以内に,隣接細胞への蛍光色素の移動が終了した。購入したテレビカメラで,蛍光色素の移動を,容易に又正確に,調べることができた。 自律神経作働薬のうち副交感神経作働薬のアセチルコリンやカルバコ-ル処理で,分離腺房の細胞間連絡は抑制された。この抑制は,濃度依存性であり,かつ副交感神経作働薬の拮抗薬で消失することより,腺房細胞表面の副交感神経作働薬に対するレセプタ-を介するものと考えられる。交感神経作働薬のアドレナリンやノルアドレナリンによる腺房細胞の細胞間連絡抑制は,副交感神経作働薬より弱いながらも認められた。現在,これら作働薬の細胞内作用機構を解明するために,各種阻害剤の影響について調べている。 自律神経作働薬による唾液分泌と細胞間連絡の関係を明かにするため,腹腔内へ注入したこれら作働薬の唾液分泌と細胞間連絡への影響を調べている。さらに,作働薬による分離腺房の細胞間連絡の変化と対比するために,分離腺房での唾液分泌の測定方法を開発しつつある。これら唾液分泌への影響結果から,次年度では細胞間連絡の生理学的意義の考察ができうるものと確信している。
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