研究概要 |
本研究では,唾液腺におけるギャップ結合の機能を解明するために,哺乳類のラットより分離した腺房を用いて,自律神経作働薬による唾液分泌やギャップ結合状態を,色素移動法で調べ,以下のことを解明した。 哺乳動物ラットの唾液腺からコラゲナーゼ処理で腺房を分離し,顕微鏡下に分離腺房へ蛍光色素を注入すると,大部分での腺房で1分以内に,隣接細胞への蛍光色素の移動が終了した。自律神経作働薬のうち副交感神経作働薬のアセチルコリンやカルバコール処理で,分離腺房の細胞間連絡は抑制された。交感神経作働薬のアドレナリンやノルアドレナリンによる腺房細胞の細胞間連絡抑制は,副交感神経作働薬より弱いながらも認められた。自律神経作働薬の効果は,c-kinase阻害剤やカルモジュリン阻害剤存在下で抑制された。c-kinase活性剤である発癌プロモーターTPAでも腺房細胞の細胞間連絡は抑制された。 唾液腺腺房細胞間のギャップ結合は分子量27Kの蛋白質で構成されることが抗体を利用した免疫組織染色で明らかになった。一部少ないながら分子量21Kの蛋白質の存在も確認された。 自律神経作働薬による唾液分泌と細胞間連絡の関係を明かにするため,分離腺房での唾液分泌を蛍光色素カルセインで測定した。カルセイン分泌は細胞間連絡が機能している腺房細胞塊では,単一細胞に比べ低下していた。逆にアミラーゼ分泌は単一細胞より腺房細胞塊で著名に増加した。 これらの結果から,唾液腺細胞間連絡の細胞内制御機構としてc-kinaseやカルモジュリンの関与を明らかにし,更に細胞間連絡による水分泌とアミラーゼ分泌に対する異なる制御機構をも明らかにした。
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