研究概要 |
細胞は細胞膜受容体を介して選択的に情報を受容して機能の量的変化として応答する.この情報伝達機構においてGTP結合蛋白質(G蛋白質)が共役因子として重要な役割を果していると考えられている.しかしながら,G蛋白質の動態と細胞応答との連関性については不明な点が多いのが現状である.そこで本研究はβー作動薬で処理した唾液腺を用いてG蛋白質の動態を分泌応答との関連で追究するとともに,分泌顆粒膜に存在するG蛋白質の諸性質についても検索を加えるもので,本年度は下記の成果を得た. (1)顎下腺あるいは耳下腺切片を10μMイソプロテレノ-ル(IPR)を用いて短時間処理すると顎下腺切片からのムチン分泌にはDesensitization(D)が,耳下腺切片からのアミラ-ゼ分泌にはSupersensitivity(S)が認められた.これらの組織切片からの細胞膜を調整し,[^<35>S]GTPγSとの結合実験を行った.その結果,顎下腺ムチン分泌のD時には百日咳毒素(PT)処理膜ではなくコレラ毒素(CT)処理膜においてBmax値が約30%増大することが認められた.耳下腺アミラ-ゼ分泌において見られるSに際してはCT処理膜においてBmax値は対照に比して約20%減少した.したがって,G蛋白質とくにGi蛋白質のGTPとの結合能がD時には増大し,S時には減少することが示され,Gi蛋白質が細胞応答との関連で重要な役割を果たす可能性が示された. (2)耳下腺分泌顆粒であるチモ-ゲン顆粒を分画し,これをさらに前報に従って精製した.この顆粒膜を[^<35>S]GTPγSとの結合実験に使用した.その結果,顆粒膜にもG蛋白質が存在し,その結合能はCTあるいはPTで処理しても細胞膜のG蛋白質との間に有意の差は認められなかった.しかし,ボツリヌス毒素(A型)で処理すると顆粒膜のBmax値は細胞膜に比して著しく低下した.したがって,耳下腺分泌顆粒には細胞膜とは異なった性質を有するG蛋白質の存在が明らかにされた
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