研究概要 |
細胞膜受容体とアデニル酸シクラーゼ系を介する細胞内情報伝達機構において細胞膜に存在するGTP(G)結合蛋白質が共役因子として調節的役割を果している。しかしながら、このG蛋白質の動態と細胞応答との連関性については不明な点が多いのが現状である。本研究は唾液腺G蛋白質の動態を腺分泌との関連で追求するものであり、本年度はβ‐作動薬であるイソプロテレノール(IPR)の短時間処理によって、この作動薬による耳下腺からのアミラーゼ(AM)分泌にSupersensitivity(S)が惹起される実験系を用いて、C蛋白質のりん酸化とSとの関連性を調べた。ラット耳下腺切片を前報に従って1μM IPRで処理した後、細胞膜を調製した。この細胞膜を10mM Mgcl_2,1mM ADTE,1mM ATPを含む50mM triethanolamine(pH7.4)にProtein kinase Aを加えて加温振盪し、膜蛋白質をりん酸化し、さらに[^<32>P]NADおよび活性化した百日咳毒素あるいはコレラ毒素を加えてADP‐リボシル化した。TCAにて反応停止後沈渣をtriethanolamine(pH7.4)で洗滌し、最終沈渣を0.04%CHAPSを含む溶液を用いて可溶化してSDS‐PAGEに供した。その結果、Protein Kinase Aでりん酸化し、さらに百日咳毒素でリボシル化した膜蛋白を電気泳動すると41KDaの位置に一本の明瞭な放射活性が認められた。このバンドの放射活性をradioactive scannerで解析し、さらにこの解析像を画像解析すると、このバンドの面積はAM分泌のS時には対照に比して50%減少していた。この結果はIPRで前処理した耳下腺細胞膜のG蛋白質とくにGiをリン酸化しておくと百日咳毒素によるADP‐リボシル化が減少し、Giの機能が抑制されたことが示された。Gsについては現在検討中である。したがって、耳下腺とβ‐作動薬との1回目の反応によって、細胞内c‐AMPレベルが上昇し、これによって活性化されたProtein Kinase AがGiをりん酸化し、この蛋白質のADP‐リボシル化を抑制して、この蛋白質のadenylate cyclaseに対する抑制機能が解除され、AM分泌のSが惹起されることが明らかにされた。
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