研究概要 |
ネンプタール軽麻酔ネコを用い、口蓋圧刺激で惹起される閉口・開口反射時における咬筋・側頭筋及び顎二腹筋支配運動ニューロン(Mass.Temp.およびDig.Mns)の興奮と抑制を調ベた。まず閉口反射では後方部口蓋の圧刺激で送られた情報の一部はパタン発生器に入り、この発生器より、Mass.およびTemp.Mnsには脱分極電位、Dig Mnsには過分極一脱分極電位が送られることが分った。Mass.およびTemp.Mnsには閉口前120‐160msで脱分極電位が惹起され、この電位はC相(Opening phase)の初期まで持続する。Temp.MnsではEPSPsの立ち上がりがMass.Mnsよりも急峻で、Temp.Mnsが主にA相(Closing phase)に関与するといえる。Temp.およびMass.Mns共にB相(Occlusal phase)では脱分極電位が持続しているが、Dig.Mnsにはこの期間過分極電位が誘発される。なお、Dig.Mnsでは過分極電位は閉口前約140msに生じ、B相まで持続し、C相では脱分極電位になる。C相ではDig,Mnsはスパイクを発射し閉じた顎は開き次第に元の位置に回復する。 前方部口蓋の圧刺激では開口反射が惹起されるが、Temp.Mnsでは圧刺激でIPSPsが誘発され、IPSPsは開口前80msに発生し、500-600ms間持続する。一方、Dig.Mnsでは開口前40msで興奮が生じ、この興奮は約80ms間持続する。この興奮期間が急速な開口期に相当する。やがてTemp.Mnsでは介在ニューロンより送られる持続性の興奮性Inputsが前方部口蓋より送られる抑制性Inputsにまさり、次第に興奮性が回復し顎は圧刺激中でもしだいに閉口する。以上の如く本実験で閉口・開口反射の基本的神経機構を明らかにすることができた。
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