研究概要 |
骨代謝には種々のホルモンやサイトカインが関与する。また骨吸収活性を持つ破骨細胞の形成には、骨芽細胞が重要な役割を演じている。特に、骨吸収作用を有する活性型ビタミンDは、骨芽細胞に作用して間接的に破骨細胞の形成を促進すると考えられることから、我々は活性型ビタミンDが骨芽細胞に働いてどのような因子を産生するか検討した。その結果、既に報告されているオステオポンチン以外に未知の蛋白質(分子量116kD)の存在を見い出したので精製・分離を行い、最終的にN末端のアミノ酸配列を決定し、分子量116kDの蛋白質はマウス補体第3成分(C3)であることがわかった。そこでC3の産生調節機構について蛋白質及び遺伝子のレベルで解析を行い、以下のことが判明した。 1.C3の産生は初代骨芽細胞,骨髄間質細胞(ST2)において活性型ビタミンDの添加時に見られた。産生量および経時的変化はWestern blot法,Radioimmunoassay法により検討した。 2.C3の産生は活性型ビタミンDばかりでなく、災症性骨吸収因子であるインタ-ロイキン1(ILー1),TNF,LPSなどでも観察された。 3.C3遺伝子の発現は48時間後に最大となり、アクチノマイシンDで完全に抑制された。 4.血液中には1.5mg/mlのC3濃度が存在するが、90%が肝臓で合成される。従って、マウス肝細胞を培養して活性型ビタミンDの添加によるC3遺伝子及び蛋白質の産生を検討した。その結果、活性型ビタミンDは無添加の状態で既にC3の産生が高く、そのレベルは添加時にも変動しなかった。 以上の実験結果から、骨芽細胞と肝臓におけるC3産生調節機構は異なっており、骨芽細胞における剌激因子として活性型ビタミンD,ILー1,TNFが見い出された。
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