研究概要 |
1991年、我々は活性型ビタミンD[1α,25(OH) _2D_3]がin vitroで骨芽細胞に働いて、116kDの蛋白質を産生することを見い出した。この蛋白質を精製しアミノ酸配列を決定したところ、マウスの補体第三成分(C3)であることが見い出された。そこで、活性型ビタミンDによるC3の遺伝子発現、並びに蛋白質の産生機序をin vitroで詳細に検討し、更に骨組織におけるC3蛋白質の生理活性について検討した。その結果、以下の結論が得られた。 (1)活性型ビタミンD,インターロイキン1,TNF,LPSは骨髄間質細胞及び骨芽細胞に働いて、C3遺伝子発現レベルを上昇させ、C3蛋白質の産生を促進した。活性型ビタミンDにより産生されたC3は培養液中に分泌され、その濃度は5μg/mlに達した。 (2)ビタミンD欠乏マウスに活性型ビタミンDを投与すると、骨組織中にC3遺伝子の発現及び蛋白質の誘導がみられた。 (3)骨組織におけるC3の局在を調ベたところ、periosteum,cranial suture,metaphysisに見い出された。 (4)肝臓からも大量のC3が産生されるが、産生発現はビタミンDの非投与下、及びビタミンD欠乏マウスにおいても見い出されたことから、肝臓におけるC3の産生は活性型ビタミンDの制御を受けないと結論された。 (5)骨髄細胞を用いた破骨細胞形成系に活性型ビタミンDと一緒にC3抗体を添加すると、破骨細胞の形成が完全に抑制された。 (6)C3レセプター及びC3蛋白質はマイクロファージ様細胞と小型の破骨細胞に見い出された。 以上の結果から、活性型ビタミンDの刺激により骨芽細胞から産生されるC3の骨組織における生理的役割の一部を解明することができた。
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