研究概要 |
咬筋収縮ー弛緩サイクルを制御するCa調節系である筋小胞体(SR)を中心としたCa動態に対するフリーラジカルの効果と解析について,その深化を図り,加えて虚血シュミレーションを含む統合的研究を行った。 1.in vitro活性酸素ラジカル発生系: (1)xanthine-xanthine oxidase反応は,イヌ咬筋SRのCa輸送を低下させる。この効果はSODまたはcatalase+mannitolで抑制された。 (2)H_2O_2-FeSO_4はイヌ咬筋SRのCa輸送を低下させる。この効果はcatalaseまたはOHスカベンジャーで抑制された。 (3)H_2O_2のみでは何の効果も認められなかった。 (4)xanthine-xanthine oxidaseもH_2O_2-FeSO_4もESRでOHを発生させることが確認された。 2.虚血シミュレーション(虚血咬筋細胞内pHでのincubation): (1)反応メディウムのpHを7.0-4.0に変化させた場合,SRのCa輸送はpHに依存して低下し,pH6.4で有意な低下を示した。 (2)pH6.4で咬筋ホモジネートをincubateすると,SODあるいはcatalase+mannitol抑制性のCa輸送低下がみられた。また,カルモジュリアンタゴニスト(W-7,compound48/80)は,pH6.4のincubationでみられる効果を増強した。 (3)予めindomethacinを処置したイヌから摘出した咬筋のホモジネートでは,pH6.4のincubationでみられる効果が消失した。 (4)arachidonic acid,PGG_2はSOD抑制性に咬筋ホモジネートのCa輸送を低下させた。PGH_2.PGE_2には何の効果もなかった。 以上の結果を考察し,虚血シミュレーションはin vitro活性酸素ラジカル発生系の効果を再現できるという新しい知見を得ることができた。これに加え,カルモジュリン阻害が活性酸素ラジカルと協力的であることから,SRのCa放出の増加がホモジネートCa^<2+>輸送の低下にリンクする可能性が示唆された。この点,平成5年度の研究で明確にしたい。
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