研究概要 |
咬筋収縮-弛緩サイクルを制御する細胞内Ca^<2+>調節系である小胞体(SR)機能に焦点を絞り,そのCa^<2+>ハンドリングに対する活性酸素ラジカルの作用様式を解析した。結果を以下に要約する。 1.咬筋SRのCa^<2+>遊離能は,心筋や大腿筋のSRより大きかった。 2.咬筋SRの受動的Ca^<2+>拡散の経路は,生理的な興奮-収縮連関に関与するCa^<2+>流出経路ではない。 3.咬筋SRのCa^<2+>チャンネルは,カルモジュリンによって抑制的に制御されている。 4.アシドーシスは,SRのCa^<2+>輸送系を脱共役に導くとともに,筋原線維トロポニンのCa^<2+>感受性を低下させる。 5.アシドーシスの効果は,活性酸素ラジカルの産生によって仲介されている。ラジカル産生経路は,SR以外の咬筋細胞構成成分から遊離されたアラキドン酸代謝過程であり,これはPGG_2→PGH_2変換部位であると考えられた。 6.in vitroでラジカル発生系(キサンチン→キサンチン酸化酵素反応)をSRに反応させた場合,アシドーシスの効果が擬似された。したがって「アシドーシス→アラキドン酸代謝促進→活性酸素ラジカル産生→咬筋機能障害」という一連の過程を実証できた。 7.活性酸素ラジカルは,SRのCa^<2+>チャンネルを通過するCa^<2+>放出を増大させる。この作用は,SRのカルモジュリン活性の低下と密接にリンクしている。 活性酸素ラジカルの主要標的がSRのCa^<2+>ハンドリングである可能性を強く示唆することができる。
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